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2021年07月の記事
オリンピック関係者をタクシーで輸送 場当たり的・危険な輸送方式を見直せ
2021/07/26
TCTサービスでタクシーを臨時にハイヤーに流用するときに掲示する看板。この紙を掲げると、タクシーがハイヤーになり、外すとタクシーに戻る
穴だらけのバブル方式
国内外の多くの人々の心配を無視して開催が強行される東京オリンピック・パラリンピック。来日した五輪関係者(IOC関係者、スポンサー、放送、プレス関係者など)を一般タクシー車両をつかって輸送する方式が、7月8日に大会組織委員会から東京ハイヤー・タクシー協会に説明があり、9日からすでに実施されています。自交総連本部と東京地連は連名で「オリンピック関係者のタクシー輸送見直しを求める声明」(7月12日付)を出しました。
今回行われている送迎は、「TCTサービス」(Transport by Chartered Taxi=借上げタクシーによる輸送)と呼ばれます。
不特定多数の利用者を乗せるタクシー(都内全社・全車両が対象)を、オリンピック関係者を乗せる時だけハイヤー(非公共交通機関)とみなして輸送し、終わったらまたタクシー(公共交通機関)に戻して一般利用者を乗せるという極めて安易な運行形態です。
従来、オリンピック関係者は入国後14日間、公共交通機関を利用できないため、移動は専用バス、専用車両かハイヤー(完全予約で営業所から貸し切って利用する車両)のみに限るとされていました。ところが大会直前になって“ハイヤー車両が足りないから”と、急きょ一般のタクシー車両を流用することになりました。
紙看板(画像参照)一枚でタクシーがハイヤーに早変わりし、関係者が降車したら再び流し営業を含めて不特定多数の一般利用者を乗せることになります。
感染力が強いとされる変異株がまん延し、すでに入国した選手団からも陽性者が出ています。今後もプレス関係者などの入国が増加するなかで、五輪関係者を一般市民と接触させないとする「バブル方式」に穴が開き、運転者や一般利用者に極めて高い感染リスクが生じることは明らかです。
オリパラ組織委に抗議
国土交通省の責任重大
自交総連の「声明」は、「このような場当たり的で非常識な輸送方式をタクシーに押し付けている組織委員会に抗議する」とし、「感染の可能性がある人を隔離するために公共交通機関の利用を制限するという感染症対策の原則を乱暴に破壊する方式を、オリンピックのためなら何でもありとばかりに認めた国土交通省の責任は重大」と指弾。
さらに「全社・全車両で実施することとなったのは、まさに開催直前。この日程では運転者のワクチン接種など必要な準備も間に合わない。無計画、場当たり的に強行実施されたものであり、運転者の命と健康を無視し、人間扱いしないものといわざるを得ない」と批判した上で、少なくとも直ちに実施すべきこととして「使用車両は一般タクシー車両と区別すること」「運転者についてはワクチン接種が済んだ者を担当とすること」「エッセンシャルワーカーであるすべての運転者のワクチン優先接種を早急に実施すること」などを求めています。
いつまで続くコロナ危機 大阪A地区の運転者証交付数2万人割れ目前
2021/07/15
このままでは“限界産業”
昨年来のコロナ禍で記録的な営収減に苦悩するタクシー業界。大阪タクシーセンターの統計によると、管内特定指定地域(大阪府A)の運転者証交付数(法人+個人、個人=事業者乗務証)は最新の6月30日現在20114人で、2万人割れ目前となっています。
年度末(3月末)ごとの交付数を比較すると、2018年度末(19年3月末)22888人→19年度末(20年3月末)21926人で962人の減。20年度末(21年3月末)は20439人で前年度末から1487人の減となり、減少幅が前の1年間の1・5倍に拡がりました。
年齢別(大阪タクセンの最新の統計は5歳きざみで14区分)にみると最も減少幅が大きいのが「65歳以上70歳未満」で、18年度末→19年度末が525人減、19年度末→20年度末が966人減。後者は減少幅全体の65%を占めます。
21年6月30日現在、年齢14区分中最も多いのが「70歳以上75歳未満」4659人で、全体の23・2%。65歳未満の合計と65歳以上の合計がほぼ同数です(前者10046人、後者10068人)。
「70歳〜75歳未満」突出
法人運転者の年齢構成を大阪A地区と、東京特別区武三地区(東京タクセン管内の特定指定地域、23区・武蔵野市・三鷹市)で比較すると(21年5月末現在)、東京では55歳以上から75歳未満まで4区分が14〜15%で並んでいるのに対し、大阪では「70歳以上75歳未満」が突出(21・8%)。「65歳以上70歳未満」とは5ポイントの差があります。
営収がやや持ち直したところへ東京では4度目の緊急事態宣言発出。ワクチン接種も進まず、コロナ禍は収まりそうにありません。タクシー産業にとってはこの危機をいかに耐え抜くかが当面の課題ですが、危機を言い訳にして劣悪な賃金・労働条件を放置したままでは、業界が限界を迎える日は遠くありません。
〈改善基準告示見直し〉自交総連の意見書 労政審専門委全委員に送付
2021/07/05
過労死防止に本気出せ
自交総連本部(高城政利委員長)は6月18日、自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)の改正について「意見」を提出しました。
改善基準告示見直しのための厚労省・労働政策審議会労働条件分科会自動車運転者労働時間等専門委員会(専門委員会)は、分野別に検討をすすめるため、5月26日にハイヤー・タクシー作業部会の第1回会合をひらき、今年11月頃には改善基準告示見直し案をほぼ固め、2022年2月には報告書を作成、専門委員会の確認を経て同年中に告示改正を公布する予定となっています。
自交総連は、タクシー・ハイヤー、バスの労働者1万2000人以上を組織する全国産業別労働組合として、専門委員会の委員への選任を求めてきましたが、委員には選任されていません。審議の際は自交総連の代表が可能な限り傍聴していますが、その場で意見を述べることはできません。
専門委員会の審議の結果は、すべてのハイタク労働者、バス労働者の労働条件に重大な影響を与えるものです。自交総連としての意見がこの先の審議に反映されるよう、専門委員会の全18人の委員へ「改善基準告示改正についての意見」を書面で郵送しました。
法制化で罰則設けよ
「意見」では改善基準告示について、「基準が緩すぎ、労働者の健康と安全運転を担保するには不十分」「(現行の内容では)過労死を引き起こすリスクを上回る長時間労働を認めているということになってしまう」と指摘し、次のとおり改正するよう求めています。
〈拘束時間〉
・タクシー(日勤勤務)=1か月238時間以内、1日最大13時間
・タクシー(隔日勤務)=1か月228時間以内
・バス=1か月240時間以内、1日最大13時間
〈休息期間=乗務終了後、次の乗務までの時間〉
・タクシー(日勤勤務)=継続11時間以上
・タクシー(隔日勤務)=継続24時間以上
・バス=継続11時間以上
〈バスの運転時間、連続運転時間〉
・運転=1日7時間、連続2時間以内(運転中断は1回連続15分以上の休憩)
さらに、告示は法律ではないことから「法的な強制力が伴わない」「罰則がないので、確信犯的に違反をしている使用者に対しては無力」として、改善基準告示および関連する通達の主要な部分について法制化を行うよう求めています。