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2013年08月の記事
大阪地方最低賃金審議会への意見陳述(7月30日)
2013/08/05
最賃引き上げ反対は「安心・安全」への背信
私はタクシー・バス労働者が、低賃金のために長時間働いても満足に食べていけず憲法25条で保障されている「健康で文化的な最低限の生活を営む権利」が侵され、乗客の「安心・安全」が危ぶまれている実態と、最低賃金の大幅な上乗せが労働者の生活と健康を守り、乗客の「安心・安全」を担保するために必要不可欠なものであることを陳述します。
タクシーは1997年消費税増税の影響で、売上が減少しているところに、2002年の規制緩和(参入規制の撤廃)によって大阪のタクシーは1991年20,302台だったものが2008年には23,356台と3,054台増え1台あたりの売り上げが大幅に減少、2008年のリーマンショックがそれに拍車をかけました。
2009年にタクシー適正化・活性化法が施行されタクシーの台数は規制前の水準に戻りましたが、当時から供給過剰の状態は近畿運輸局も認めていました。
府内のタクシー労働者の平均賃金の最高は1991年505万円だったものが2012年279万円と226万円44.75%も減少しています。
タクシーの賃金体系は累進歩合制・リース制が多く、タクシー利用客はもちろんのこと、乗務員を増やせばそれだけ事業者の儲けが増える仕組みになっています。
そのために事業者は規制緩和によって無節操に車両数を増やし、利益を上げようとしましたが、景気が落ち込んでいる中での増車で、大幅な供給過剰になり1台あたりの売上が激減、それに比例して乗務員の賃金が下がり家庭を維持することができないため、若者が入ってこなくなりました。大阪のタクシー乗務員平均年齢は60歳を超えています。
運転者には「自動車運転者の労働時間等の改善基準」で労働時間規制がありますが、タクシーの規制は1か月の拘束時間、日勤勤務者299時間、隔日勤務者262時間、時間外労働時間に換算すると、日勤者約103時間、隔勤者約64時間と、長時間労働を容認しています。
過労死認定基準では、時間外労働1か月45時間を超えると過労死との関係が徐々に強まり80時間を超えると関連が強いとされています。タクシー・バスの過労死は全労働者平均の約4.8倍になっています。
タクシー事業者はタクシーに最低賃金はなじまないとしていますが、事業者自らが需要に見合った車両数にすることもせず、規制緩和で無秩序に増車し公共交通機関として乗客の「安心・安全」を担保する最低限の労働条件・環境をもないがしろにする背信行為でしかありません。
営業収入が上がらないため、実際には休憩できず、駅等の待機場所での客待ちまで、自動日報で休憩時間とカウントして労働時間を短縮する違法行為が蔓延しようとしています。
違法行為を取り締まり、需要に見合った車両数や、タクシー事業の適正化・活性化に取り組み1台当たりの売り上げを上げる手立てを講じれば、最賃は限りなく発生しなくなります。
バス労働者も2000年の規制緩和以降賃金が下がり続け最賃800円パートでの雇用が広がり、生活するためにダブルワーク・トリプルワークを行っている乗務員も現れています。
このような低賃金労働者が現れたために、正社員の賃金も下がり、収入を得るために長時間ハンドルを握らなければならなくなっています。
過労が起因すると思われる重大事故が多発しています。これ以上の犠牲者を出さないためにも、全体の労働条件向上にむけ最低賃金1000円以上に上げることを求めます。
大阪タクシー協会が今年も最低賃金大幅引き上げに反対
2013/08/05
公共交通事業者の責務放棄するな
最賃決定に年金加味は情けない、まず適正需給の回復を
7月30日に開かれた大阪地方最低賃金審議会・第303回総会では労使双方からの意見陳述が行われ、大阪タクシー協会・三野副会長は業界の賃金支払能力が不足していることを理由に最賃大幅引上げ反対を表明。自交総連大阪地連・松下書記次長は「(引上げ反対は)公共交通機関として安心・安全を担保する最低限の労働条件・環境をもないがしろにする背信行為でしかない」と批判、最賃1000円以上への引上げを求めました(別掲)。
最賃法に問題あり
大タ協は、総会に先立って大阪最賃審に提出した7月23日付「意見書」で、「最低賃金の引上げは生産性が向上し、事業の賃金支払能力に余力が生じて初めて可能になる」としていますが、これは最低賃金法の第9条第2項《地域別最低賃金は、地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払い能力を考慮して定められなければならない》を念頭に置いたものです。
しかし世界的に見ると、最賃額決定の考慮要素に「賃金支払い能力」を含んでいるのは、先進国では日本だけです。ILO(国際労働機関)は第135号勧告で、最賃の決め方について「労働者とその家族の必要」「国内賃金の一般的水準」「生計費」などを考慮要素とするよう定めています。この中に「賃金支払い能力」は含まれてはいません。
日本の最低賃金額は「支払い能力」を考慮しているため主要国では最低レベルに抑制されています。国連の社会権規約委員会は今春、日本政府に「最低賃金水準を決定する際に考慮される要素を見直す」よう勧告しています。
社会的に許されない
最賃法の前回改正(07年)前の議論では、考慮要素の見直し論が浮上したものの使用者側の猛反発で「支払い能力」が条文に残ったという経緯があります。経済学者の清家篤氏(慶應大教授)は、厚労省が設置した有識者会議で「最低賃金というのは、労働の需給という観点から言えば、供給側の最低限の生活水準を担保するといった趣旨のもの」「その水準はあくまでも供給側にとってそれ以下に賃金が下がっては困る、という水準として決められるべきであって、企業がその賃金を払えるかどうかということは、本来は考慮の外にあるはず」「これ以下の賃金では困るという最低賃金が決められた場合、それを払えない企業は残念ながら労働市場から退出してもらうしかない」と主張しています(04年12月)。
利用者に「安心・安全」を保証すべき公共交通の事業者が、生活保護基準(=必要最低生計費)を下回っている運転者賃金の大幅引上げに反対する──こんなことが社会的に許されるでしょうか。1000円以上への最低賃金引上げを当然のこととして受け止め、業界全体で大幅減車やバラバラ運賃是正に全力をあげるのがスジというものです。
意見陳述で大タ協・三野副会長は「最賃額決定に年金を加味してほしい」と要請しましたが、参加者は「この言葉ひとつをとっても産業として成立していないことを世間に言っているようなもの、業界が自浄作用を働かせ構造を変える真摯な取り組みが先決ではないか」と感想を述べています。