HOME < タクシートピックス
タクシートピックス
更新情報・ニュース
月別バックナンバー
2021年08月の記事
第一交通産業G また不当労働行為
2021/08/25
原告勝利判決が確定
企業買収で全国に事業を拡大し、組合つぶしを行ってきたタクシー大手、第一交通産業グループの鯱第一交通(名古屋市)に対し、労組書記長に対する「退職扱い」は不当労働行為であり「無効」とした名古屋高裁判決が確定しました。最高裁が7月27日、会社の上告を棄却しました。労組側は並行して行われている中央労働委員会で争議解決を目指します。
高裁で逆転勝訴
鯱第一交通は2016年、第一交通労組の委員長と書記長に対し、病気休職が終了したなどとして、解雇、退職扱いとしました。愛知県労働組合総連合(愛労連)などによると、同社では管理職やそれに同調する社員らが、組合員に対し罵声を長時間浴びせるなどの嫌がらせ行為が続いていました。
名古屋高裁は今年2月、会社側が脱退勧奨を行ってきたこと、組合役員らの雇用を打ち切ってきた経過を踏まえ、組合員を会社から排除するために、休職中の書記長を「退職扱い」にしたことは不当労働行為であり無効と判断しました。一審の名古屋地裁は原告である書記長らの請求を退けていました。
併行して審理を行っていた中央労働委員会では2月に結審しましたが、名古屋高裁の原告側逆転勝訴があり、一転して審理を再開。10月に予定されている未払い残業代請求訴訟の判決を見て、秋にも和解協議に入るとみられます。
愛労連は7月30日、最高裁決定について「同様の不当労働行為に苦しむ全国の第一交通グループで働く労働者に大きな希望を与える」と歓迎する声明を発表しました。同社に対しては「判決を重く受け止め、不当労働行為を直ちにやめ、労働法の順守と正常な労使関係の構築を求める」と訴えています。
労働者委員は連合独占
労働委員会の改革必要
さらに声明が今回の争議で問題視するのは、労組の申し立てを棄却した愛知県労働委員会(愛労委)の資質です。名古屋高裁が不当労働行為を認定し、最高裁が追認した一方で、本来、労組の最も身近な救済機関であるべき労働委員会が真逆の判断をしていたことになります。
愛労連の竹内創事務局長は、「愛知県内の労組は、愛労委に申し立てても救済を認めてもらえないので、最初から裁判に訴える傾向がある。以前から公益委員に労働法学者が1人もおらず、労働者委員は連合独占。労働委員会の改革が必要だ」と話します。
愛労連は、労働委員会のあり方を問う集会を9月に県内で開催します。
大阪地方最賃審に「異議申出書」提出
2021/08/25
大阪労連のなかまとともに異議申出書を提出する自交大阪・庭和田書記長
最賃一千円届かず
10月から適用となる2021年度の地域別最低賃金の答申が出そろいました。中央最低賃金審議会の答申は、昨年度は事実上の据え置きでしたが、今年度は引き上げ目安額を28円としていました。地方最低賃金審議会では、すべての都道府県で28円以上引き上げる答申が出されました。最低賃金は法律に基づいて必ず支払われなければならないものです。中小企業に対する国の支援も重要です。
時給1500円は必要
大阪地方最低賃金審議会は8月4日、今年度の大阪府最低賃金の改定について、現行の964円を28円引き上げて992円(京都=937円、和歌山=859円)にすると答申しましたが、この金額では1日8時間・週40時間働いても、憲法25条で保障された「健康で文化的な最低限のくらし」が実現できる水準には届きません。全労連と地方組織が取り組んだ「最低生計費試算調査」では25歳の単身で月額24万円、時間額で1500円以上は必要との結果が示されています。
また、最高額の東京都(1041円)と大阪府の差は49円もあり、全国的にも地域間格差の解消を求める声が強まっています。
コロナ禍の中でエッセンシャルワーカーと呼ばれる労働者の多くは最低賃金水準で働いています。こうした労働者に報いるためにも、最賃大幅引き上げが必要です。
そして最賃引き上げの影響を大きく受ける中小零細事業者への支援策も喫緊の問題で欠かせません。7月6日には、京都総評がこの間取り組んできた懇談や要請の結果、京都府議会で、最賃引き上げに加えて税・保険料の減免等による中小企業支援や雇調金の特例措置、持続化給付金の再給付などが盛り込まれた意見書が全会一致で採択されました。
将来展望を開くために
大阪労連加盟の各産別は8月19日、大阪地方最低審議会に対して「大阪府最低賃金を時間額1500円、日額12000円、月額24万円に引き上げること」「全国一律最低賃金制度を確立すること」などを求めるとともに、中小零細事業者支援策を強化・充実させるよう政府・厚生労働省や関係各機関に意見を送付することを求める「異議申出書」を提出しました。
自交総連大阪地連(福井勇委員長)が提出した「異議申出書」では次のように指摘・主張しています。
「最低賃金を引き上げるのは困るというのが経営者団体の主張ですが、話は逆です。最低賃金の補填を受けても、現在の最低賃金の水準では、到底生活を維持するには足りません。生活が維持できず、コロナウイルス感染の危険もあって、昨年以降、タクシー運転者の離職が全国で急速にすすんでいます。最低賃金を大幅に引き上げて、最低賃金で生活が維持できるようにしなければ、タクシー事業から労働者がいなくなってしまいます」
「低すぎる最低賃金は、タクシーに象徴的にみられるように、安い人件費で経営が維持できてしまうために、経営者の生産性向上に対する意欲を低下させます。また、低すぎる最低賃金は、コロナ危機のなかで、労働者の最低限の生活を危うくしています」
「コロナ危機を乗り越え、タクシーの将来展望を開くためにも最低賃金を引き上げ、労働者が最低限の生活を維持できるようにすることが必要です」
〈自交本部〉国交省に五輪関係者タクシー輸送見直しを申し入れ
2021/08/05
国交省の担当者(右)に要請書を渡す高城委員長(7月16日、東京・国交省で=自交本部提供)
「運転者の皆さまにお詫び」
でも危険な輸送方式は継続
自交総連本部(高城政利委員長)は7月16日、五輪関係者のタクシー輸送(ハイヤー流用輸送)について、緊急の国交省交渉を行い、自交総連の声明(前号に全文掲載)を手渡し、紙看板一枚でタクシーとハイヤーを入れ替えて海外からの入国者を乗せる危険な輸送方法を見直すよう求めました。
声明に基づき、五輪関係輸送の車両と一般タクシー車両を区別するなど、具体的な改善策を提案しましたが、国交省は、「運転者のみなさまに不安を抱かせたことはお詫びしたい」と言いながら具体的な見直しはせず、消毒を徹底してもらうと繰り返すばかりでした。
通達の解釈をねじ曲げている点、車両の区別や営業所に戻って消毒するように提案しているのに見直しをしない国交省の姿勢に、自交総連として抗議しました。