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2020年09月の記事

徹底的なPCR検査で一日も早くコロナ禍終息を
2020/09/25

感染と供給過剰二重苦
乗務員の命と生活守れ


 大阪タクシー協会が毎月公表している大阪府のタクシー「輸送実績」によると、コロナ緊急事態宣言下の4月は日車営収が17626円、5月は19763円。宣言解除後の6月は27928円と持ち直していますがコロナ禍前の水準には遠い状況です。

 2月は33157円(前年同月比769円増)だった日車営収は、コロナ感染拡大とともに3月に入ると前年同月比6238円減の27117円と急激に悪化。4月7日に緊急事態宣言が出ると駅待ちが2時間を超えるようになり、深夜の需要はほぼ消滅。4月は前年同月比15572円減の17626円と記録的な下落となりました。実働率は3月が62.7%(前年同月比3.8P減)、4月が53.0%(同13.3P減)でした。
 雇用調整助成金制度の特例措置が4月1日から始まると各社が休業に踏み切り、5月の実働率は37.6%(前年同月比26.8P減)。それでも同月の日車営収は19763円(同11603円減)でした。
 緊急事態宣言が解除(大阪府=5月21日)されると、休業していた事業者の一部が営業再開し、6月の実働率は50.9%。需要も戻ってきましたが、実働率が前年同月比13.5P減という状況にありながら、日車営収は27928円(前年同月比5019円減)と、厳しい状況が続いています。
 乗務員数は18年8月末〜19年8月末で754人減だったのが、19年8月末〜今年8月末で1446人減と減少幅が倍増。
 70歳を境に増減が分かれる傾向が続いており、この1年間で70歳未満は1739人もの減、70歳以上が293人の増となっています。

雇調金の特例
段階的に縮減


 当初は9月末とされていた雇用調整助成金の特例措置期限は12月末まで延長されましたが、厚生労働省は「感染防止策と社会経済活動の両立が図られる中で、休業者数・失業者数が急増するなど雇用情勢が大きく悪化しない限り(略)特例措置等は、段階的に縮減を行っていく」としています。
 9月17日の新規感染者数は東京都が171人、大阪府が57人。なし崩し的に経済活動を再開させたところで感染がぶり返したら元の木阿弥です。
 “若年者や壮年者が感染しても大したことはない”という楽観論もありますが、高齢化が著しいタクシー乗務員にとっては脅威でしかありません。現在営業中の乗務員にとっては、感染の恐怖と供給過剰で二重の苦しみです。現時点では無事であっても、命だけは失えば取り返しがつきません。諸外国のように行き届いた休業補償とセットでPCR検査を徹底的に行い、ウイルスを完全に封じ込めない限りタクシー業界の苦悩は終わりません。

コロナ禍で需要減 供給過剰回避のため国交省が新通達準備
2020/09/15

コロナ禍で需要減 供給過剰回避のため国交省が新通達準備 先の見えないコロナ禍と需要減に乗務員の苦悩が続く(3月12日撮影)

準特定地域 指定解除見送り


 国土交通省は9月2日、準特定地域の指定解除の取扱いについて、コロナ禍による需要減で、指定解除により供給過剰となるおそれがある場合は解除を見送る方針を決め、新たな運用通達のパブリックコメントの意見募集を開始しました。
 新通達は9月中に制定して、毎年10月1日に公示される準特定地域の指定解除に適用されます。
 本年度の指定解除の判断は2019年度実績にもとづいて行われるはずでしたが、コロナ禍で今年3月以降、需要は急減しています。このため、「指定を解除することによって供給過剰となるおそれがあると認められる場合は、2021(令和3)年9月30日まで指定の解除を見送ることとする」としています。

全地域で供給過剰

 準特定地域における需給状況・適正車両数は、毎年8月末に各運輸局から公示され、前年度(今回=2019年4月〜20年3月)の輸送実績にもとづいて計算されます。
 すべての地域で供給過剰状態にあり、増加可能車両数はありませんでした。
 コロナの影響は、今年3月の分が含まれているだけなので、この時点ではまだ顕在化していません。
 4月以降の2020年度輸送実績では、大幅な需要の減少となっており、さらに供給過剰状態となっているのは確実です。

関西中央グループ 関中鶴見に自交の旗
2020/09/15

 関西中央交通(株)鶴見営業所で働く仲間は、かねてから職場の正常化を求め自交総連関西中央グループ共闘会議の福井議長(大阪地連委員長)に相談し、仲間と協議する中で労働組合結成への想いが醸成され8月24日午後、鶴見区内で結成大会を開催。組合名を関西中央鶴見労働組合とし自交総連大阪地連に加盟することも満場一致で決定しました。
 翌25日、福井議長と関中鶴見労組の徳原委員長、篠田書記長が結成通知と団交申し入れを行いました。
 会社は団交を応諾し9月4日午後から同営業所で、関西中央グループ統括管理部執行役員の高月勝守氏と同営業所長の佐々木博幸氏、組合側は福井議長と大阪地連の庭和田書記長、そして単組三役が出席し協議しました。
 協議した結果、(1)従前の労働条件(賃金、事故等の扱い等慣習慣行)は、すべて現状維持とする。(2)組合事務所を貸与する。しかし、場所等社内で協議する必要があるため一定の期日を要する。(3)組合掲示板の使用(事務所2階通路指定場所)及び所内での組合情宣活動(上部団体機関紙配布等)を認める。(4)チェックオフは、会社の指定期日までに組合が書類を作成し提出する。(5)会社に対する申入れは、書面をもって行うこととする。との議事録確認を交わしました。
 徳原委員長は「別組合の運営に疑義があり組合結成に至ったが鶴見営業所で働く仲間のためになる真っ当な組合活動を行っていきたい」と決意を語っています。

仙台地裁の仮処分決定について(要旨)
2020/09/09

仙台地裁第4民事部 令和2年(ヨ)第43号
地位保全等仮処分命令申立事件 2020.8.21決定(齊藤研一郎裁判官)


【主文の要旨】
 債務者は、債権者Aに、令和2年9月15日から令和3年9月15日までの間、毎月15日限り、5万円を仮に支払え。〈同、債権者B3万円、債権者C1万2000円〉

【理由の要旨】
 本件解雇は有期雇用契約の期間満了前の解雇であるから「やむを得ない事由」(労働契約法17条1項)が必要である。やむを得ない事由の判断にあたっては、本件解雇が整理解雇でもあることからすると、(1)人員削減の必要性、(2)解雇回避措置の相当性、(3)人員選択の合理性、(4)手続きの相当性の各要素を総合的に考慮して判断すべきである。

(1) 人員削減の必要性について
 債務者の売上については、令和2年3月ころから、新型コロナによるタクシー利用客の減少による売上の減少が始まり、4月は激減した。債務者の4月の収支は約1415万円もの支出超過、4月30日の資産は総額約3133万円もの債務超過となっている。新型コロナの影響によるタクシー利用客の減少がいつまで続くのか不明確な状況であった以上、本件解雇時において、債務者に人員削減の必要性があること及びその必要性が相応に緊急かつ高度のものであったことは疎明がある。
 しかし、今後については、給与は従業員を休業させることによって6割の休業手当の支出にとどめることが可能であり、しかも、雇用調整助成金の申請をすればその大半が補填されることがほぼ確実であった。また、燃料費、修繕費、保険料、自賠責保険料は、臨時休車措置をとることにより免れることができた。
 これらの事情を総合すると、債務者の人員削減の必要性については、ただちに整理解雇を行わなければ倒産が必至であるほどに緊急かつ高度の必要性であったことの疎明があるとはいえない。

(2) 解雇回避措置の相当性について
 債務者は、本件解雇に先立ち、雇用調整助成金の申請や臨時休車措置の活用はしていない。厚生労働省や労働基準監督署、宮城県タクシー協会がホームページや説明会を利用して雇用調整助成金を利用した雇用の確保を推奨していたこと、東北運輸局がホームページを利用して臨時休車措置の利用を推奨していたこと〈など〉に照らすと、債務者は、本件解雇に先立ち、これらの措置を利用することが強く要請されていたというべきである。債務者の解雇回避措置の相当性は相当に低い。

(3) 人員選択の合理性について
 本件全疎明資料によっても、債権者らが顧客からのクレームが多いこと〈など〉の疎明があるとはいえない。そうすると、人員選択の合理性の程度も低い。

(4) 手続きの相当性について
 解雇通知は、整理解雇との関連性に欠ける記載が多く、団体交渉の席上での口頭説明では十分とはいえない。そうすると、本件解雇の手続きの相当性も低い。

東北地連(宮城)センバ流通支部の不当解雇撤回闘争
2020/09/09

東北地連(宮城)センバ流通支部の不当解雇撤回闘争 仙台駅のタクシープール(2011年12月撮影)

解雇無効 仮処分で勝利


 東北地連ハイタク一般労組センバ流通支部は、コロナによる営業の不振を理由に4月に組合員全員を含む整理解雇が通告されていた事件で8月21日、仙台地裁で解雇無効の仮処分決定をかちとりました。コロナで赤字になったなどを理由にした解雇は、雇用調整助成金の利用など解雇回避措置がとられていないことなどから無効と明確に認定されました。しかし、賃金仮払い仮処分については一部しか認めない不十分な決定となっています。

 仙台市の(有)センバ流通(タクシー業)では、20年4月30日の団体交渉の席上で突然、組合員全員を含む従業員の大半に整理解雇が通告されました。会社は“コロナで売上が下がり、毎月赤字がかさみ、事業継続のためには人員削減をする必要がある”として、雇調金の活用などの組合側の提案に対しては“いつ出るかわからない。コロナがいつまで続くかわからない”などとして受け入れずに解雇を強行しました(有期雇用契約の期間満了前の解雇)。このため、4人の組合員が債権者として、地位保全、賃金仮払いの仮処分を申立てていました。
 審尋で会社は、赤字で借金もあり、コロナの影響がいつまで続くか不明のなかで、事業継続のためには人件費を削減するほかないとし、雇調金を利用していないが、雇調金は支給時期が不明であり、その間休業手当の支払を継続するだけの財政的基盤がなかった、などと主張していました。
 決定は、解雇には「やむを得ない事由」(労働契約法17条1項)が必要であり、その判断にあたっては、(1)人員削減の必要性、(2)解雇回避措置の相当性、(3)人員選択の合理性、(4)手続きの相当性(整理解雇の4要件)の各要素を総合的に考慮して判断すべきであるとしました。
 そのうえで、(1)人員削減の必要性があっても、ただちに整理解雇を行わなければ倒産が必至であるほどに緊急かつ高度の必要性があったとはいえず、(2)雇用調整助成金や臨時休車措置等を利用した解雇回避措置が可能であったにもかかわらずこれを利用していないという点において解雇回避措置の相当性が相当に低く、(3)人員選択の合理性及び(4)手続きの相当性も低い――として、解雇は無効と判断しました。

賃金仮払い
一部しか認めず


 しかし賃金仮払いについては、得られるべき賃金を最低賃金の休業手当分(6割)として低く見積もった上、4人のうち3人は減額され、1人は年金収入と貯金がある等の理由で認められず、地位保全については賃金仮払い仮処分を超えて必要性を認めるべき特段の事情がないとされました。「年金収入」「貯金」がなぜ賃金不払い容認・被告免責の理由になるのでしょうか。ここでも経営びいき、労働者軽視の不公平司法が繰り返されたといえます。