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2021年09月の記事
大阪地連21年秋季年末闘争方針を決定
2021/09/27
いのち守る政治へ
政権交代をめざす
自交総連大阪地連(福井勇委員長)は9月21日に第5回拡大執行委員会を開き、2021年秋季年末闘争の「方針」と「統一要求」を決定しました。
「闘争方針」では、(1)コロナ危機から労働者を守るたたかい、(2)変動運賃制度と白タク合法化の阻止、政策要求の前進、(3)政治変革、国民的要求実現を「重要課題」とし、「コロナ危機への対応としての計画休業、休業手当、最低賃金の支払いなどを点検し、休業期間の延長、手当改善にとりくむ」「総選挙で、国民と野党の共同で命と暮らしを守る政治への転換、政権交代をめざす」などとしています。
自交総連大阪地連 2021年秋季年末統一要求(案)
1 雇用調整助成金や新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金などを最大限活用し、稼働する車の日車営収が上がるよう需給調整すること。またこの機に運賃の適正化と大口割引等を是正すること。
新型コロナを理由とした合理化や拡大傾向にあるアプリ手数料等を受益者負担と称し乗務員に負担させないこと。
2 アプリを利用したMaaSや自家用有償旅客運送の安易な拡大、さらに松井大阪市長が「大阪市全域に拡大する」と明言し進められている生野区・平野区で行われている実証実験・AIオンデマンドバスの動きや御堂筋の全面歩行者化に向けた南海難波駅高島屋前広場の整備・実証実験を注視し、時機にあった施策を組合が講じられるよう協力すること。
3 労働条件を切り下げることなく定年を65歳まで延長すること。退職金制度(中小企業退職金制度への加入)を確立している事業所においては掛金を増額し、未制度事業所は制度の確立、もしくはそれに代わる制度(若年雇用対策)を創設すること。また、自交総連大阪地連振興共済会(労使各250円掛金)制度に加入していない事業者は加入すること。
4 嘱託・定時制労働者の労働条件(賃率アップ、足きり引き下げ、有給休暇付与日数など)を是正すること。
5 道路運送法・労働基準法など関係法令を遵守し、アルバイト、日雇いなど雇用しないこと。
6 すべての労働条件や配置転換、解雇などについては事前に労働組合と協議し、同意を得なければ実施しないこと。また、事業の休廃業、身売り問題については労働組合との事前協議と合意の上で行う、いわゆる「同意約款協定」を締結すること。
東京・千代田区で重大事故、通行人・利用者・運転者が死傷
2021/09/27
責任は業界全体にあり
またしてもタクシー運転者の意識喪失による重大事故が起きてしまいました。9月11日、東京・千代田区で、くも膜下出血を起こしたとみられる運転者男性(64)のタクシーが横断中の自転車や歩道にいた人をはね、1人が死亡、タクシー利用者を含む4人が重軽傷を負い、運転者も翌日に死亡しました。
報道によると、運転者は乗務歴25年以上の個人タクシー乗務員でした。
17日配信の日刊ゲンダイDIGITALは、運転者について「通常は、午後3時ごろから午前2時ごろまで車を走らせていた。母親によると、持病はなく、これまで大きな事故を起こしたこともない」、また19日配信の読売新聞オンラインは「東京旅客個人タクシー協会によると、(略)事故当日は普段は仕事を休んでいた土曜日で、協会関係者は『コロナ禍で客が減り、休日返上で仕事に出ていたのではないか』と語った」と報じています。
昨年12月には、北九州市戸畑区で、心疾患で意識を失った運転者と利用者1人が死亡。今年1月には東京・渋谷区で運転者が脳卒中を起こし、歩行者を次々にはねて1人が死亡、5人が重軽傷を負い、運転者は意識が戻らないまま3月に死亡しています。
前出の読売の記事では「健康管理の強化が課題」「背景には運転手の高齢化がある」と指摘しています。国土交通省は事業者に向けて、運転者の疾病の早期発見に努め、運転者に生活習慣改善を促すよう求めていますが、それだけでいいのでしょうか。くも膜下出血は過労死の原因として多い疾病です。
ストレスが心身に影響
労働環境の改善が急務
1999年、学術誌「労働科学」に掲載された論文※1では、夜勤タクシー運転者1名(43歳男性、降圧剤服用)を対象に、乗務中の走行や営業収入など状況観測と併せて、携帯型心電計や携帯型自動血圧計を使って心室期外収縮(VPC)※2を計測。
その結果として、「連続夜勤で睡眠不足が推定される下で、営業運転がVPC出現の誘因となり、」「勤務日の運転後半での低額の営収とVPC数やいらいら感の増加の重なりが見られた」「客の獲得、特に自らの目標金額を達成する運転後半期の努力がVPC出現頻度の増加をもたらしたことが示唆された」とまとめています。
密室内での接客、走っても走っても周りは空車の同業者だらけ──乗務中のストレス、「いらいら感」は乗務した人間にしかわかりません。「改善すべき生活習慣」にしてもストレスと無縁ではないはずです。
ストレスの背景にある労働環境、賃金制度や労働条件について、運転者の意見を参考にして改善することが急務です。今回事故を起こしたのは個人事業者ですが、運転者一人に責任をかぶせたまま現状を放置していては、市民にとっての「安心・安全なタクシー」が失われることになります。
※1 「夜勤タクシー運転手のVPC出現増加に果たす職務ストレスの役割」(前原直樹、佐々木司、 李卿、澤貢、守和子、花岡知之、渡辺明彦)
※2 心室期外収縮(VPC)=心室からの異常興奮により生じる不整脈。VPCの出現数や重症度が増すにつれ心血管系の死亡率も増す。
自動車運転者が働く事業場への監督指導状況
2021/09/15
2020年 労働法令違反率80.9%
ハイタクは87.2%
全国の労働局や労働基準監督署が2020年にトラック・バス・タクシーなど自動車運転者を使用する事業場に対して行なった監督指導の状況について、厚生労働省が取りまとめて公表しました。
3654事業場に監督指導が実施され、このうち労働基準関係法令違反が認められたのは2957事業場(80.9%)。また、改善基準※告示違反が認められたのは、1882事業場(51.5%)。
監督実施事業場数が2018年(6531)、19年(4283)からさらに減少しているのはコロナ禍の影響と思われます。
法令違反の内容は、労働時間が最も多く45.5%、次いで割増賃金が22.9%。改善基準告示違反は上位3事項の多い順に、最大拘束時間37.1%、総拘束時間27.9%、休息期間25.9%。
ハイヤー・タクシーをみると、労働法令違反率が全体より高く(87.2%)、改善基準告示違反率が全体より低い(27.8%)のが特徴です。
※=自動車運転者の労働時間等の改善のための基準
改善基準告示改正 第2回ハイタク作業部会
2021/09/06
第2回ハイタク作業部会の様子(8月27日、東京都港区の中央労働委員会会館で=自交本部提供)
使用者側「急激な短縮困る」
労働者の健康・安全を軽視
改善基準告示の改正を審議する労働政策審議会・労働条件分科会・自動車運転者労働時間等専門委員会の第2回ハイヤー・タクシー作業部会が8月27日、中央労働委員会会館(東京)でひらかれました。自交総連本部の菊池書記長が傍聴しました。
(自交総連本部『自交労働者情報』8月31日付)
作業部会では、前回に引き続き項目ごとに労使双方から意見を出しあい、この日はとくにまとめは行わず、次回の会議では数字の「たたき台」を出して論議することになりました。
会議では、事務局が前回会議での双方の主張をまとめて説明したうえで、さらにそれぞれの意見が述べられました。
使用者側の意見は前回同様、“労働時間を短縮すれば賃金が下がって、労働者がいなくなってしまう”というものでしたが、“労働時間の短縮自体に反対するものではないが、コロナもあり、この時期に急激な短縮をするのは避けてほしい”と、急激な変化は困るという点に重点を置いた言い方になっていました。
労働者側は、“労基法改正の主旨にもとづき時短をすべきで、主張している時間は、厚労省が実施したアンケートからも根拠がある時間だ”としました。
使用者側の主張は、結局、労働者がいなくなったら困るから現状維持に留めてくれというもので、労働者の健康や利用者の安全を軽視した無責任なものといわざるを得ません。今後、具体的な数字が出てくるに際しては、実効ある改正(時短)が求められます。
事務局から資料として、過労死の労災補償状況、労災認定と時間外労働時間の関係、勤務間インターバルと労災認定の関係、外国の労働時間規制(インターバルおよび特例規定)、インターバルと睡眠時間の関係についてのアンケート結果などが提出されました。これらの資料は、自交総連が先に提出した意見書で指摘した労働者の健康維持の観点、睡眠を確保するインターバル時間の必要性、特例はなくすべきなどの指摘に即したもので、意見書の主張を裏付けるといえるものです。
次回(11月頃)には具体的な数字が公益委員から示される予定です。
作業部会での主な主張
【日勤の拘束時間、休息期間】
労働者側 タクシーに適用される年間960時間の時間外労働の上限からみても1か月275時間は当然の主張だ。今回実施したアンケートの内容とも合うもので適切な時間だ。
使用者側 1か月299時間を275時間にすると1か月24時間、年間288時間も短くしなければならないので難しい。1日の拘束時間も減らさなければならなくなり、出来高給なので乗務時間が1時間減れば賃金が下がる。タクシー運転者の賃金は、昨年はコロナもあって年収300万円になってしまった。退出する労働者が多い。急激な短縮は避けてほしい。
労働者側 コロナの状況は別の問題で、2019年を基準に考えるべき。
使用者側 拘束時間は、あくまで上限なので、みんなそこまでやれということではない。実態は上限までいっていない。生産性の高いドライバーが1〜2割いて、そういう人でも守れる上限を提案している。
労働者側 休息期間は11時間必要。健康維持、睡眠時間の確保など厚労省の資料でもエビデンスがある数字だ。人の命を預かることを考えて原則を決めたうえで、繁忙期対策(例外)の議論はできる。
使用者側 現行8時間から3時間も延ばすのは困難だ。地方からの意見も含め全国的に急速な変更はできないという声がある。時短をして魅力ある産業にすることに反対ではない。
【隔日勤務の拘束時間、休息期間】
労働者側 2日にわたる勤務は過酷だから1か月の拘束時間が日勤より短くなっている。現行から変えないというのはあり得ない。
使用者側 隔日勤務の1か月262時間というのは、年間960時間の範囲内なので現状でよい。
【車庫待ち等の規定】
労働者側 どういう形態が車庫待ちなのか定義をしっかりしてから議論すべき。
使用者側 拘束時間を減らすのと比例して減らせばいいのではないか。
公益委員 労使から意見が出ていないが、車庫待ち等の特例で労働時間を延長できることが外だしで決められているのは国際的にあまり例がない。現行の規定は延長できる時間があまりに長すぎる。将来的に、特例を考え直すことも議論していいのではないか。