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2021年12月の記事
自交総連11.11中央行動 内閣府交渉
2021/12/06
中央行動で「ダイナミックプライシング(変動制運賃)の導入を中止せよ」とアピールする交運共闘のなかま(11月11日、東京・経産省前で=本部提供)
タクシーの公共性壊す
変動制運賃導入するな
11月11日に行われた自交総連中央行動では、厚生労働省交渉に続いて内閣府交渉に取り組み、自交総連交渉団はタクシーへのダイナミックプライシング(変動制運賃)導入や無人自動運転移動サービス実用化について、中止するよう要請しました。(参照=自交総連本部『自交労働者情報』11月16日付)
実証実験の利用者少数
組合側は変動制運賃について、(1)「高需要時はタクシーが“金持ち”だけの移動手段になり、豊かでなくても移動にタクシーが欠かせない人の利用を阻害する」、(2)「低需要時に運転者の賃金が低下し安全性に影響する」、(3)「原価を適切に反映せず消費者保護にも反する」などとして「タクシー運賃の公共性を破壊する」と指摘し、導入しないよう求めました。
内閣府側は(1)「障がい者らの移動の自由を奪うのでは本末転倒になってしまうので、そういう人は通常のサービスを利用してもらうようにしている」、(2)「極端な割高や事業者に過度な負担になる割安になるなど、タクシーの役割を阻害することはできないので、公定幅運賃の中で変動するようになっている」、(3)「利用者・事業者に過度な負担とならないように国交省と検討している」などと回答。
組合側は、利用者が変動運賃を確認した上で乗車する配車アプリで国交省が実証実験を行なっていることについて、「ほとんど利用者がいないと聞く。ごく少数のデータでは判断できないのではないか」と質問。内閣府側は「そこは重要だ。十分なデータが必要と思う」と認めました。
優先順位を誤るな
組合側はソフトメータについて「正確性の課題が解決していないうえ、個人情報保護の懸念も消えない」として導入しないよう要請しましたが、内閣府側は「個人情報の保護はもちろんしなければならないが、収集された情報が売上増につながるようなノウハウをタクシー事業者に還元していきたい」と述べ、優先順位を誤った行政の危険性を垣間見せました。
バス・タクシーなどの無人運転の実用化について組合側は「地震の際の避難誘導など、他所から人が駆けつけて対応するのでは間に合わない。運転者が同乗して即座に対応することが必要だ」と指摘。内閣府側は「指摘された点は受け止める」と応じました。
自交総連11.11中央行動 厚労省交渉
2021/12/06
要請の趣旨説明をする自交本部・高城委員長(11月11日、東京・厚生労働省で=本部提供)
悪質企業の監督強化を
困窮する労働者を救え
自交総連本部(高城政利委員長)が11月11日に東京・霞ヶ関で取り組んだ「中央行動」では、国土交通省交渉(前号報道済み)に続いて、厚生労働省交渉と内閣府交渉を行い、厚労省に対しては自交労働者に必要なコロナ禍対策の実施、改善基準告示※の実効性ある改正(乗務間のインターバル規制を現行8時間以上→11時間以上とするなど)を要請しました。(※改善基準告示=「自動車運転者の労働時間等改善のための基準」。参照=自交総連本部『自交労働者情報』11月16日付。内閣府交渉=2面)
厚労省交渉で組合側は、タクシー・バス乗務員の命、暮らし、雇用を守るために必要なコロナ対策として、(1)「雇用調整助成金の特例措置を延長し、上限額の減額など改悪をしないこと」「歩合給がある場合の助成額算定方法が変更されたことを理由に、休業手当を不当に減少しないよう使用者に徹底すること」、(2)「休業支援金・給付金を延長し、申請する労働者への協力を事業者に対して指導すること」、(3)「乗務員のPCR検査費用の公費負担、ワクチン3回目接種における交通運輸従事者の優先」、(4)「最低賃金法違反の是正」、(5)「雇用保険給付における基本手当の計算方法を特例的に改めること」、(6)「困窮する労働者に対する直接的な金銭面での支援策」などを要請。
省側は(1)の後段部分について「休業手当支払額を変更する際は労使の合意が必要であり、事業者の一存では変更できない」と回答。組合側は「実際に休業手当を下げてくる例が全国で多発している。休業をやめる会社も増えている。制度の本来あるべき姿になっていない」と指摘しました。
(4)について「いまやタクシー業界はほとんどの都道府県で最賃違反が発生している。これだけ最賃違反がまん延する業界に対して特別な手立てを打つべきではないか」と質した組合側に対し、省側は「統計データ上でも実質的な賃金が最賃を下回るケーースが出ていることは把握している。問題意識として大きく認識している」と応じました。
また省側は(5)について「最賃違反が認定・是正された場合は、新たに支払われた賃金を含めて基本手当を再計算する」としましたが、コロナ前の賃金を基準に計算する特例については「特例を設けると再就職のマイナスになりかねない」として否定しました。
労働者の期待裏切るな
労働政策審議会の作業部会で議論が続いている「改善基準告示」改正について組合側は、「労働者の健康維持、交通の安全維持、労働時間の短縮という目的・趣旨にそって、使用者側が主張する経営上の理由に過大に配慮することなく、適切な労働時間短縮となる結論が出されるようにすること」を要請。
また、10月8 日に開かれた作業部会で、厚労省事務局が休息期間(乗務と乗務の間のインターバル)について「11時間以上」とする『見直しの方向性(案)』を提示したことをふまえ、関係する労働者・労働組合の意見を広く聞き、「11時間以上」とする案を堅持するよう求めました。
「厚労省の休息期間11時間の提案は英断だ。改正は運転者の健康維持のためという目的をふまえて揺るがずにいてほしい」という組合側の念押しに対して頷(うなず)いてみせた省側でしたが、11月24日に開かれた作業部会で厚労省事務局は、組合側の期待を裏切る提案をしています。